• 検索結果がありません。

【本編】基本構想 北上市総合計画20112020 後期基本計画を策定しました | 北上市

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "【本編】基本構想 北上市総合計画20112020 後期基本計画を策定しました | 北上市"

Copied!
42
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

基 本 構 想

優秀賞 「こんな街だったらいいな北上市」

(2)

第1章 計画の策定に当たって

1.策定の趣旨

 北上市は、平成3(1991)年の3市町村合併を契機に、新市の総合発展計画を策定し、これに基づ いて目指す将来目標の実現のためにさまざまな取り組みを進め、現在の礎を築いてきました。その後、 分権型社会の到来等も相まって、地方自治の原点として、市の自主性、主体性を起点とした取り組み 方が重要となってきたことから、平成 13(2001)年3月策定の北上市総合計画(計画期間:平成 13

(2001)年度∼平成 22(2010)年度/以下「前計画」という。)において、市民参画による計画づく りを進めるとともに、基本計画に地域住民自らが策定した地域計画を盛り込むなど、まちづくりの推 進体制として「協働」を位置づけ、市政運営を進めてきました。

 一方、この間、人口減少や少子高齢化の進行、地球温暖化の進行と環境に対する意識の高まり、社 会経済のグローバル化や高度情報化のさらなる進展とその中で生じた世界同時不況(平成 20(2009) 年)、また、価値観やライフスタイルの多様化、市民の市政への関心(参加・協働)の高まり、地方分 権の進展と財政緊縮における効率的な行財政運営など、社会経済の時代環境は大きく変化してきてお り、様々な施策領域において新たな課題が生じてきています。

 これらの状況を踏まえつつ、北上市が持続的な発展を図るためには、長期的な将来展望に立った行 政施策を総合的・体系的に展開することが求められています。また、地方分権の時代を迎え、市は市 民に最も身近な基礎自治体として、自らの判断と責任のもと、持続可能※1  な地域社会の確立を目指し ていくことが重要となってきていることから、北上市の進むべき方向性を示す羅針盤として、分権型 社会に対応した実現性ある新たな総合計画を策定する必要があります。

 また、前計画は、その計画期間の終期を迎え、さらには、策定時の時代的な背景を受け計画の内容 等において右肩上がりの傾向をもつ面が含まれていることから、時代の変化に適応した市政運営を図 る規範として、新たな総合計画を策定することとしました。

2.策定の視点

 総合計画は、将来の北上市をどのような「まち」にしていくのか、そのためにどのような取り組み をしていくのかを総合的・体系的にまとめた市の最上位計画です。総合計画は、自らの意思で自らの まちづくりを行う地方自治の原点であり、まちづくりの進むべき方向と目標を明らかにし、その実現 に向けて、市民と行政がそれぞれの役割に応じて、主体的にまちづくりを進めていくための「市民共有」 の行動指針となるものです。

 そのため、私たちの望ましい市の姿を市民と行政が協力して描き、みんなで行動していくことが重 要となります。

 総合計画の策定に当たっては、社会経済情勢の変化に的確かつ柔軟に対応し、持続可能で自立した まちづくりを目指すとともに、市民共有の目標となるような計画とするため、次の視点に立って策定

【基本構想】 第1章 計画の策定に当たって

(3)

 (1) 市民の主体的参画と多様な協働の促進

  (2) 地方分権への対応と魅力ある地域づくりの促進 

  (3) 持続可能な行財政運営の確立 

  (4) 行政評価と連動する計画の進行管理

 これからの市政運営は、より一層市民の視点に立ち、まちづくりの主体である市民、地域団体、N PO(非営利組織)、企業等と行政のパートナーシップによるまちづくりを進めていく必要があること から、市民参画と情報公開の機会を積極的に設け、幅広い議論を通じて、まちづくりの方向性を共有 するとともに、計画の基本である施策レベルから市民の思いを最大限尊重し、市政運営の最も重要な 指針である総合計画の推進に当たっても市民参画を取り入れていく計画を目指しました。

 また、地域課題の解決に向けて、市民、地域団体、NPO、企業、行政等それぞれに期待される役 割を示すなど、多様な協働を促進する計画を目指しました。

 地方分権の進展とともに、自治体は自ら決定し、責任を持って行動することが求められています。 こうした中、住民自治の基本となる自治振興活動やコミュニティ活動との連携強化、また、市民や NPO、企業などそれぞれが力を発揮した市民参加の促進、市民の多様な声に応える情報公開や情報提 供などが実施される開かれた市政など、地方分権に対応した計画を目指しました。

 また、個々の地域特性を踏まえながら、それぞれの地域資源や人材の育成・活用などにより「地域力」 の向上を図り、個性を活かした魅力ある地域づくりの展開を促進する計画を目指しました。

 国の財政状況が厳しさを増す中で、北上市においては合併による交付税の加算措置が終了し、さら には国の三位一体改革に伴い地方交付税が大幅に削減されるなど、財源の確保が依然厳しい状況が続 くことから、創意工夫で難しい局面に対応する計画を目指しました。

 市民ニーズが高度化・多様化していく中、限られた経営資源を有効活用するため、人口構成比の変 動等本市を取り巻く社会動向の変化に伴い、必要とされる財やサービスは質・量ともに常に見直しを 図るとともに、効果的、効率的な行財政運営の観点から施策の重点化を図り、財政の健全化と新たな 行政需要に柔軟に対応できる計画を目指しました。

 市民意識調査や前計画の評価・見直し等検証作業により整理された課題に適切に対応するとともに、 目指すべき将来像を見据えた施策の展開や、まちづくりの達成目標を明らかにする成果指標を設定す るなど、市民の視点に立った分かりやすい計画を目指しました。

 また、計画を進めていく上では、行政評価※ 2  や公会計改革※ 3  、組織改革等関連する業務との一体的 な推進を図るとともに、市民と行政が施策目的の共有化を図り、評価を行うなど進行管理の仕組みを 適切に整備することで、環境変化に応じて、施策・事業の実施→評価→改善といったマネジメントサ イクルが機能する計画を目指しました。

【基本構想】 第1章 計画の策定に当たって

(4)

3.計画の構成と期間

 この総合計画は、平成 23(2011)年度∼平成 32(2020)年度の 10 年間のまちづくりの考え方を 示す「基本構想」と、前・後期それぞれ 5 年間の具体的施策や事業内容を示した「基本計画」、さらに 毎年度実施する具体的事業を示した「実施計画」から成ります。

総合計画の構成

  (1) 基本構想 

 基本構想は、地方自治法第 2 条第 4 項に規定するもので、まちづくりの将来目標とその実現のため の基本方向(市政運営の施策の大綱)を明らかにしたものです。計画期間は平成 23(2011)年度か らの 10 年間とします。

【基本構想】 第1章 計画の策定に当たって

(5)

25 26 27 28 29 30 31 32 23

年度

基本構想 基本構想(10年)

前期基本計画(5年)

(地域計画含む) 後期基本計画(5年)(地域計画含む) 基本計画

実施計画

24

実施計画(3年)

ローリング(見直し) 計画期間

  (3) 実施計画  

  (2) 基本計画  

 実施計画は、基本計画で示された施策を展開するため、具体的な事業を示したものです。

 毎年度の予算編成方針及び事業実施の指針となるもので、3 年間を計画期間としながら、行政評価 制度による進行管理とあわせ、毎年度見直しを行い、計画の具体化を図ります。

 基本計画は、基本構想に掲げた将来目標を実現するため、福祉・教育・文化・環境・産業など、分 野ごとの現状と課題を分析し、課題解決に向け必要な基本的施策を示したものです。社会経済情勢の 変化に的確かつ柔軟に対応し、実現性ある計画とするため、計画期間は前・後期それぞれ 5 年間とし ます。後期計画は、前期計画の進捗状況や評価結果により見直しを図り、策定します。

【地域計画】

 北上市を構成する 16 地域で策定される「地域計画」は基本計画に位置づけられます。

 地域それぞれの望ましい将来方向を見定め、その実現に取り組むため、基本構想に沿った施策の体 系に各々の計画内容(施策に応じた事業)が対応するものです。

【基本構想】 第1章 計画の策定に当たって

(6)

第2章 北上市の概況

1.北上市の歩み

●豊かな自然の恵み∼北上川舟運の拠点と開田

 豊かな自然の恵みに包まれた北上地方は、先史の時代から人々が定着してきた歴史を持ち、その痕跡 は、縄文時代の集落跡とみられる樺山遺跡などに残されています。古墳時代から平安時代には稲作の発 達により、江釣子古墳群を造るだけの豊かな経済基盤が築かれ、平泉文化以前には北上川東岸丘陵地帯 に国見山廃寺をはじめ数々の寺院が建立されるようになり、古代仏教文化の中心地となりました。  古くからこの地方は、南北交易と東西交易の交差する地域として栄え、近世、南部藩と伊達藩が境 を接するところとして、奥州街道の宿駅、北上川舟運の中継港、秋田に通じる仙北街道の起点となり、 物資・情報の交流拠点として栄えました。

 また、南部藩は更なる新田開発を進め、奥寺堰開削などの開拓事業を興し、今日の農業基礎を築き ました。

●交通の要衝∼工業化の進展

 明治 22(1889)年に市町村制の施行により、黒沢尻町をはじめ、村々が誕生し、統合や再編の百 年の歴史を刻み始めます。明治 23(1890)年に東北本線が開通し、現在の南北交通の礎ができまし た。戦後は、湯田ダムの建設に伴う農業の大規模な構造改革や工業導入への先駆的な取り組みがなさ れてきました。昭和 52(1977)年に東北自動車道が、昭和 57(1982)年には東北新幹線が開通して、 東京からの日帰り圏域となり、交通の要衝として、企業誘致などの産業活動にも一段と拍車がかかり、 現在では、わが国でも有数の先端技術産業の集積が図られてきています。

●産業・文化都市としての発展∼地方分権の時代

 平成 3(1991)年、旧北上市・和賀町・江釣子村の 3 市町村が合併し、新しい「北上市」が誕生し ました。近年は工業のみならず、商業や観光面の成長もあり、また、特徴ある文化施設や快適な生活 環境の整備が進められたことで、産業都市として、また文化都市として発展するとともに、景観法に 基づく景観形成のための意識啓発や計画づくりが進められています。平成 12(2000)年、地方分権 一括法※ 4  の施行に伴い、自治体の自主・自立型経営が強く求められる中、北上市では、まちづくりの 推進体制として「協働」を位置づけ、地域の特色を生かしたまちづくりを進めるため、総合計画の基 本計画に地域計画を盛り込むとともに、県内初となるまちづくり協働推進条例(平成 18(2006)年 4 月)を市民参画で策定し、協働によるまちづくりを進めてきました。

【基本構想】 第2章 北上市の概況

(7)

2.位置・地勢と気候

 北上市は、岩手県の内陸中部、北上平野の中ほどに位置し、東西 38㎞、南北 34㎞で総面積は 437.55㎢(面積は岩手県内 35 市町村中 14 位、全国 1,810 市区町村中 245 位の大きさ)、2 市 2 町(花 巻市、奥州市、金ケ崎町、西和賀町)と隣接しています。

 東部には北上高地、西部には奥羽山脈、夏油温泉周辺は栗駒国定公園の一部となり、緑豊かな自然に 囲まれています。両山地の中間地帯には北上平野が広がり、田園地帯と市街地及び工業団地が開けてい ます。平野部の東端には北上川が南流し、秋田県境付近から和賀川が東に流れ、北上川に合流しています。  標高は、平野部で約 50 ∼ 200m、東

部丘陵地で約 200 ∼ 400m となってい ます。気候は、東日本の太平洋側の気 候区に属していますが、奥羽山系と北 上山系に挟まれているため内陸性の気 候の特性となっており、日本海側の気 候の影響を受けやすく積雪量も比較的 多い地域です。

※面積順位は、平成 20 年版「全国市町村要覧」 による

3.地理的条件および交通

 北上市は、古くから交通の要衝として、栄えてきた地域です。市内の南北方向に軸を形成する JR 東 北本線、東北新幹線、東北縦貫自動車道及び国道 4 号と、東西方向の軸を形成する JR 北上線、東北横 断自動車道秋田線及び国道 107 号が交差し、首都圏と 2 時間 30 分、日本海とは 1 時間 30 分で結ばれ るなど「北東北の十字路」として利便性が高くなっています。

 また、盛岡市へは約 45㎞、仙台市へは約 138㎞、秋田市へは約 107㎞、東京には約 490㎞の距離に あり、港湾では釜石市、大船渡市、秋田市とつながり、隣接する花巻市にはいわて花巻空港が立地して

北上市の位置

盛岡市

宮古市

奥州市 大船渡市 花巻市

北上市

久慈市

遠野市

一関市

陸前高田市 釜石市 二戸市

青森県

秋田県

宮城県 雫石町

葛巻町 岩手町

滝沢村 八幡平市

紫波町 矢巾町

西和賀町

金ヶ崎町

平泉町

藤沢町 住田町

大槌町 山田町 岩泉町

田野畑村 普代村 軽米町 洋野町

野田村 九戸村

一戸町

【基本構想】 第2章 北上市の概況

(8)

4.人口・世帯

 北上市の人口は、これまで増加で推移してきました。その約 6 割が、社会増(転入者)となっています。 平成 17(2005)年にわが国の人口が減少に転じる中、増加で推移してきた本市でも、今後、少子化等 により減少傾向に転じることは避けられない状況です。平成 21(2009)年 3 月末の住民基本台帳にお ける人口は 93,619 人となっています。

 また、一世帯当たりの人数は年々減少しており、世帯の小規模化が進む中、世帯数については増加傾 向で推移しています。平成 21(2009)年 3 月末の住民基本台帳における世帯数は 33,701 世帯、一世 帯当たりの人数は 2.8 人となっています。

 市内の地区別人口動態をみると、市街地を中心に人口が増加している地域と山間部などの人口が減少 している地域があり、後者においては高齢化の進行が顕著になっています。

北上市の人口・世帯数の推移

※国勢調査、昭和 45 年∼平成 2 年は旧 3 市町村の合計値、各年 10 月 1 日の人口・世帯数

(単位:人)

(単位:世帯数)

人口 世帯数

100,000

40,000 30,000 20,000 10,000 0 80,000

60,000 40,000 20,000

昭和45年 昭和50年 昭和55年 昭和60年 平成2年 平成7年 平成12年 平成17年 0

16,642 18,792 21,251 22,820

24,608

33,623 28,247 31,023

68,074 71,383

76,633 80,248 82,902

87,969 91,501 94,321

【基本構想】 第2章 北上市の概況

(9)

●人口動態

 近年の人口動態は、出生が死亡を上回っており、自然増の傾向が続いていますが、その差は小さくなっ ており、増加の度合いは少なくなってきています。

 一方で社会動態では、転入者が転出者を上回る傾向で推移していますが、平成 20(2008)年の世界 同時不況以降、これまでと違った動向が見受けられるなど新たな懸念が生じています。

人口動態       (単位:人) 自然動態 ( 人 ) 社会動態 ( 人 )

増減計 ( 人 )

出 生 死 亡 増 減 転入等 転出等 増 減

平成 20 年度 886 840 +46 3,354 3,611 ▲ 257 ▲ 211

19 909 855 +54 3,604 3,301 +303 +357

18 882 828 +54 3,622 3,485 +137 +191

17 895 879 +16 3,379 3,177 +202 +218

16 915 794 +121 3,514 3,222 +292 +413

15 1,000 773 +227 3,236 3,282 ▲ 46 +181

※住民基本台帳年報

●年齢別人口

 人口構成の推移を年齢 3 区分別人口でみると、年少人口(0 ∼ 14 歳)の減少と高齢者人口(65 歳以上) の増加が続いており、少子高齢化が進行しています。近年の高齢化は著しく、平成 21(2009)年 3 月末(住 民基本台帳)の高齢化率は 21.9%となっています。

 また、平成 17(2005)年国勢調査の年齢 5 歳階級別の分布でみると、50 ∼ 60 歳代及び 30 歳代人口の 総人口に占める割合が高くなっています。県内の他市町村と比較し、20 歳後半から 30 歳代の人口の割合が 高くなっていることが特徴です。

人口ピラミッド(平成 17 年)

【基本構想】 第2章 北上市の概況

(10)

分類不能

(0.8%)371人

第1次産業 4,162人

(8.6%)

第2次産業 18,595人

(38.3%) 第3次産業

25,367人

(52.3%)

産業3分類別就業者

産業別就業者数の割合 (%)

一次 二次 三次

盛岡市 花巻市 北上市 奥州市 一関市 遠野市 宮古市 大船渡市 釜石市 久慈市 二戸市 八幡平市

4.2

15.5 8.6 38.3

18.6 27.9

15.8 23.4

10.6 11.5 29.5

58.9

16.4 8.4 12.0 28.9

58.7

20.827.6 51.6

25.227.0 47.9 30.3

61.1

31.7 51.9 64.0

29.1 25.2 47.3 32.4

53.2 51.6 52.3

14.2

27.4 56.7 80.9

5.産業

 企業誘致に力を入れ工業を中心に発展してきている北上市の経済活動は、工業の拡大とあわせて商業 やサービス業、観光産業なども活発に展開しています。このうち、平成 19(2007)年の製造品出荷額 は県内第 1 位となっており、機械・金属関連業種を中心にバランス良く配置されていることが特徴です。  産業別就業人口の総数は、増加傾向で推移してきましたが、平成 12(2000)年から平成 17(2005) 年に減少に転じています。平成 17(2005)年国勢調査によると、その構成は、第三次産業が最も多く、 52.3%を占めていますが、第二次産業の比率が 38.3%と多くなっていることが北上市の大きな特徴で す。第一次産業は減少傾向で推移しており、8.6%となっています。

 このように北上市の就業人口は、第二次、第三次の比率が高く、比較的景気の影響を受けやすい産業 構造にありますが、今後、地域経済の自立と持続的な発展に向けて、これまで積極的に取り組んできた 企業誘致や地域産業振興の取り組みを強化しながら、第一次・第二次・第三次産業がバランスよく調和 した産業構造を形成していく必要があります。

 なかでも、農業においては、農業産出額は県内上位にランクされ、米を中心とした農業が展開されて いますが、全国的な傾向と同様に農業従事者の後継者不足や農産物価格の低迷等を背景として、農家数 や経営耕地面積が減少しています。また、国内の食料自給率改善が求められている中、魅力ある農業の 展開に向けた対策が必要とされています。

【基本構想】 第2章 北上市の概況

(11)

43,755ha 総面積

8,547ha

7,117ha その他

地目別土地面積

1,039ha 雑種地

2,465ha 宅地

98ha 池沼

992ha 原野

1,249ha 畑

22,248ha 山林

6.土地利用

 北上市における土地利用の状況は、総面積 437.55㎢のうち、約半分(50.8%)を山林が占め、約 2 割が農地(田 19.5%、畑 2.9%)となっています。また、市域の約 4 割が都市計画区域、約 5 割が農 業振興地域となっています。

 宅地は 5.6%を占め、大規模小売店の進出等による郊外の市街化が進み、中心市街地に空き店舗が目 立つなど市街地の空洞化が見られます。一方、郊外においては、従来市街化していない区域における住 居系や商業系の開発が続き、一部には豊かな自然・農村景観の喪失も見受けられます。

 今後の北上市のまちづくりに当たっては、自然環境保全への配慮とともに、農地を保全しつつ市街地 の無秩序な拡大を抑制し、用途地域※ 5  においては、それぞれの有効な活用を図る方策が求められていま す。

 また、近年、関心が高まっている災害に強いまちづくりや、健康で快適に暮らすことのできる居住環 境の形成が必要となっています。

※資産税課「固定資産の価格等の概要調書」(平成 20 年 1 月 1 日現在)

【基本構想】 第2章 北上市の概況

(12)

第3章 市民の思い

 本計画の策定に当たっては、「市民の主体的参画と多様な協働の促進、魅力ある地域づくりの促進」を 視点として掲げ、市民との協働による計画検討を進めてきました。

 その一環として、市内 16 地域での「地域計画」策定の取り組みをはじめ、市民の満足度や意識を把握 する「市民意識調査」や「まちづくり市民アンケート調査」、「グループインタビュー調査」、「きたかみ未 来創造会議の開催」など、より多くの市民の意向や思いを把握し、計画に反映することを目指しました。  このうち、各地域で策定された「地域計画」は基本計画に位置づけられ、基本構想に沿った施策の体系 にそれぞれの計画内容(施策に応じた事業)を対応させながら、地域それぞれの望ましい将来像の実現に 向けて取り組んでいきます。

 また、今回行った市民の満足度や意識を把握する調査、グループインタビュー等の結果は、計画検討の ための基礎資料としてだけでなく、今後、本計画における施策の達成状況を把握する際の「基準」として、 行政評価や事業の企画、見直しを検討するための基礎資料となるものです。

1.地域計画について

 これからの地方分権の時代には、今までにもまして地域の発想を重視する施策を大事にしていくこと が重要です。地域のことは地域自らが考え、自らが責任を持って行動することが大切となってきます。 このような考え方に基づき、北上市では前計画から基本計画の中に、それぞれの地域を最も知っている 住民自らが、それぞれの将来がどうあるべきかを話し合ってとりまとめた地域計画を盛り込み、地域の 特色を活かしたまちづくりを進めてきました。

 地域計画は、市内 16 地区の現状と課題から取り組みを整理し、地域の将来像を設定するとともに、 その実現のために取り組む具体的な地域づくりプランをまとめたもので、地域の思いが込められていま す。

 本計画の策定に当たっては、

「地域計画」からはじまる継続 した地域づくりの取り組みを支 援するため、専門的な視点(岩 手大学との連携)から地域ニー ズの掘り起こしを図るなど各地 域の計画づくりをサポートする とともに、各自治振興協議会等 との協働、交流センターとの連 携を図りながら「地域計画」の 策定に取り組みました。

花巻市

西和賀町

金ケ崎町 岩崎

横川目 藤根

飯豊 更木

二子黒岩 立花 口内 稲瀬 相去 鬼柳 江釣子 黒沢尻 北上線

東北自動車道秋田線

奥州市

国道*)0 -

【基本構想】 第3章 市民の思い

(13)

2.市民意識調査について

 総合計画に基づく北上市の各施策について、市民が感じている満足度及び重要度を定期的に把握し、 今後の施策の方向性を検討する基礎資料とするとともに、行政評価や事業企画等に活用し、行政サービ スの改善につなげることを目的に、平成 20(2008)年 9 月 1 日∼ 17 日に「北上市の施策に関する市 民意識調査」を実施しました。

 市内に居住する 20 歳以上の男女 1,300 人を対象とし、43.7%(568 票)の回答がありました。

 (1) 施策の満足度

 (2) 施策の重要度

 (3) 施策の優先度

 平均満足度の高い施策は、①「企業誘致と企業活動の支援」、②「文化財の継承と芸術文化活動の展開」、

③「健康づくりと医療体制の強化」、④「暮らしを支える上下水道の整備」、⑤「災害に強いまちづくり」 の順となっています。

 分野別では、「産業(工業振興)」「教育文化」に対する満足度は高く、「行財政」に対する満足度は低くなっ ています。「基盤整備」分野では上下水道の整備が前回の⑨位から④位に満足度を上げています。

 平均重要度の高い施策は、①「災害に強いまちづくり」、②「交通事故や犯罪のない明るいまちづく り」、③「省エネルギーの推進とごみの削減」、④「子育てにやさしい環境づくり」、⑤「高齢者にやさ しいまちづくり」の順となっています。

 分野別では、「保健福祉」に対する重要度が高くなってきており、「高齢者にやさしいまちづくり」 が前回⑧位から⑤位に、「障がい者(児)が心豊かに暮らせるまちづくり」が前回⑬位から⑧位に順位 を上げています。

 近年の社会情勢を踏まえた必要性、施策の優先度については、①「子育てにやさしい環境づくり」、

②「高齢者にやさしいまちづくり」、③「健康づくりと医療体制の強化」、④「交通事故や犯罪のない 明るいまちづくり」、⑤「市民の生活保障の充実」の順となっています。

 ⑥位以下では、「行政のスリム化と財政基盤の強化」が前回⑧位から⑦位に、「農業振興と農業の保全」 が前回⑫位から⑧位に順位を上げています。

【基本構想】 第3章 市民の思い

(14)

3.まちづくり市民アンケート調査について

 本計画の策定に当たって、各分野の施策・事業に対し、多様化している市民の意向を把握し、計画へ 反映させるとともに、市民の皆さまにも「まちづくり」に参画いただき、北上市の将来について共に考 えていただくことを目的に、平成 20(2008)年 11 月に「総合計画の策定に関するまちづくり市民ア ンケート調査」を実施しました。

 市内に居住する満 18 歳以上の男女 3,000 人を対象とし、61.4%(1,842 票)の回答がありました。  また、市内の高校に通学する高校 2 年生 1,058 人を対象とし、93.7%(991 票)の回答が寄せられ ました。

 (1) 住みやすさ、定住性について

 (2) 北上市の魅力、将来の都市像について

 現在の北上市の「住みやすさ」について、一般の回答では「住みやすい」30.7%、「どちらかというと 住みやすい」55.1%を合わせると 85.8%が「住みやすい」と感じています。

 また、今後も北上市に住み続けたいという市民の定住性については、「住み続けたい」47.0%、「どち らかといえば住み続けたい」40.2%を合わせると 87.2%となっており、市民の定住志向は高くなってい ます。

 今ある北上市の魅力については、「自然が豊かである」「工業が盛んである」「安心して暮らせる」「日 常生活が便利」などが高く、今後目指すべき北上市の都市像については、「誰もが健やかで保健、医療が 充実した都市」51.0%、「農業と工業の調和のとれた都市」46.4%、「子どもが健やかに伸び伸びと育つ 都市」40.1%が高く望まれており、いずれも 4 割を超えた回答となっています。その他では「環境にや さしい都市」26.1%、「福祉が充実した都市」24.4%、「魅力ある商業都市」20.0%となっています。  高校生の回答は分散した傾向がみられる中で、「誰もが健やかで保健、医療が充実した都市」30.7%、「豊 かな自然と共生する環境にやさしい都市」30.2%、「人々がにぎわう魅力ある商業都市」30.1%となって います。

現在の北上市の「住みやすさ」について 市民の「定住性」について

【基本構想】 第3章 市民の思い

(15)

4.グループインタビュー調査について

 本計画の策定に当たって、計画づくりに参加しにくい方々等からの意見把握を目的として、「山間部 地域の高齢者」、「子育てをしている保護者」、「外国からの居住者」、「森林整備・林業関係者」の 4 部門 を対象とし、グループインタビュー方式による調査を、平成 21(2009)年 3 月に実施しました。その 結果、27 名の方々より、ご意見をいただきました。

 (1) 山間部地域の高齢者の意見について

 (2) 子育てをしている保護者の意見について

 (3) 外国からの居住者の意見について

 (4) 森林整備・林業関係者の意見について

 普段の生活に関して、元気な場合は気にならないものの、「運転ができなくなったら、バスなど公共交 通に頼ることになるが、不便であり不安を持っている」といった公共交通に不安を持っている声や「若 者や子どもが少なくなり、活気がなくなった」といった声が挙げられました。

 また、若者の転出など、地域での人口減少が続いており、高齢者のみの世帯や独居高齢者の増加がみ られることから、地域内の施設等を活用した域外の市民との交流など、地域の活性化に向けた取り組み などの課題が挙げられました。

 日ごろより保護者の感じている声として、「託児の機会が限られている」、「保育園数が不足している」、

「より手厚い育児支援の必要性」などが挙げられ、また、医療に関しては「小児科の充実」など、子ども を安心して産み育てられるような環境の整備についての意見が多くありました。

 まちづくりに関しては、市の中心市街地空洞化に伴う自動車への過度な依存に対して、交通安全に対 する不安が挙げられています。さらに、小中学校や生涯学習などの教育環境の充実、教育の質の向上に 対する期待感などの意見がありました。

 日ごろの生活の中で感じている意見として、公共施設や交通機関などの表記を「日本語だけでなく複 数言語での表示に改善」することや、日常生活の「アドバイザー」や「外国語ボランティア」の充実、 外国人登録時に窓口で各種制度等を一括で説明することなどが挙げられました。

 また、「子どもの遊び場」や「図書館の充実」をはじめとした教育関連施設や仕組みの充実、異なった 文化を受け入れる市民の意識づくりなどの課題が指摘されました。

 林業関係者からは、木材価格が低迷する中、人工林の管理が行き届かず商品価値が低下する傾向にあ るため、「森林資源の循環にむけた間伐材等の活用」、「森林の境界の明確化と所有者の特定による管理の 向上」、「森林資源と工業との連携」などの課題が挙げられました。

 また、一般市民に向けた「森林や自然に対する市民の意識啓発」や「展勝地・男山・国見山の歴史や 文化の活用」など、今後に向けた取り組み方向が示されました。

【基本構想】 第3章 市民の思い

(16)

5.きたかみ未来創造会議について

 本計画の策定に当たって、市民の視点に立った、市民参画による計画づくりを進めるため、総合計画 の基本構想・基本計画案を検討する組織として、きたかみ未来創造会議(市民と市職員の計 60 名で構成) を設置しました。

 この会議では、まず北上市の強み弱みなど現状分析を議論し、市民目線によるまちづくりの課題につ いて、分野別に洗い出し整理するとともに、課題解決に向けた施策の方向性を検討し、提言をまとめま した。

 会議からの提言をもとに、まちづくりの基本理念や将来像、将来像の実現に向けた基本施策が議論・ 整理され、本計画に反映されています。

 (1) 保健・医療・福祉について

 (2) 教育・文化について

 (3) 産業・雇用について

 北上市の強み(人口の増加、子どもの多さ、優れた子育て環境、県立中部病院の立地、開業医が多い こと、市民力や高齢者パワーの強さ、高齢者施設やサービスの充実など)と弱み(保育施設の不足、今 後の医療体制への不安、介護環境の不足、ひとり暮らしの高齢者の増加など)を踏まえ、今後とりくむ べき課題として、働きながらの子育てをサポートする環境の整備をはじめ、高齢者の健康や活動などへ のきめ細かな対応、地域におけるふれあいや助け合いの充実、さらには、プライマリ・ケア※ 6  の取り組 みなど、関係者の連携による地域医療や地域保健・福祉の必要性が挙げられています。

 北上市の強み(盛んな民俗芸能、文教・スポーツ施設の充実、生涯学習の充実、活発な市民活動、独 自の歴史文化など)と弱み(高等教育機関がないこと、学力低下の懸念、芸術文化への意識、歴史・文 化に関係する人材が十分に活用されていないなど)を踏まえ、今後の課題として、学校教育環境の充実 や特徴ある教育方針、社会教育やスポーツに親しむ機会の充実、歴史や文化、民俗芸能等に関する PR や 発表機会の充実、後継者の育成などが挙げられています。また、教育・文化の分野に共通する課題として、 充実した教育・文化関連施設をより有効活用する取り組みの必要性や世代間交流による知識や知恵の共 有をはじめ、専門的な人材やリーダー間の連携など人材活用の重要性が指摘されています。

 北上市の強み(積極的な企業誘致と働く場所の多さ、多くの飲食店、マンションの建設増加など)と 弱み(産業構造に偏りがあること、不安定雇用の増加、観光振興・農業振興面の取り組みの弱さ、中心 市街地の空洞化、多様な人材育成など)を踏まえ、今後の課題として、農・工・商・観光の連携やバラ ンスのとれた産業振興の方向が提示され、多様性のある工業を活かすとともに、魅力のある職場をより 増やすことや地元に根ざした各産業の人材育成などが挙げられています。また、食料自給率向上や食の 安全・安心に向けた農業の振興、地域の独自性、地域資源を活かした特産品開発や観光の取り組みにつ いても、その必要性が挙げられています。

【基本構想】 第3章 市民の思い

(17)

 (4) 基盤整備について

 (5) 生活環境について

 (6) まちづくりの推進体制について

 北上市の強み(幹線交通の利便性、基本的インフラの高い整備率、災害対策の充実、景観の保全など) と弱み(地域内公共交通の不便さ、自家用車への依存、生活道路に残る未整備区間、市中心部の空洞化、 災害に対する意識の低さ、下水道の未活用など)を踏まえ、今後の課題として、自然と都市のバランス がとれたまちを目指すことが重要であるとし、自然環境や地域資源を活かした景観づくりやユニバーサ ルデザイン※ 7  の考え方を取り入れたまちづくり、道路や情報網の整備、学校の耐震化をはじめとした災 害に強いまちづくり、公共交通網の整備や充実などが挙げられています。

 北上市の強み(先進的なゴミ対策、下水道や農業集落排水の高い整備率、防犯対策の整備、豊かな自 然など)と弱み(さらなるごみ減量へ向けた取り組みの不足、ごみに対する住民意識を高めることが必要、 開発による自然の減少、治安の低下など)を踏まえ、今後の課題として、分別リサイクルなどをはじめ とした 3R※ 8  の普及、地域企業間の連携によるゼロエミッション※ 9  のネットワーク化、ごみ不法投棄の防 止対策など複合的なごみ対策、また地域の防犯パトロールや消防・防災体制の充実、まちなかの生活道 路を含めたきめ細かな除雪対策が必要とされています。

 さらに、自然との共生を目指した、水質の保全や里山の整備、河川上流域の森林整備、地域の休耕田 をなくすための対策などが挙げられています。

 北上市の強み(地域における特色ある取り組み、活発な地域活動、協働体制があること、まちづくり の意識の高さ、転入者を素直に受け入れる人間性、前向きな行政改革など)と弱み(理念・長期ビジョ ンの欠如、不透明な協働の責任分担、地域間の格差、まちづくりへの意識の偏り、コミュニティの希薄化、 財政への不安など)を踏まえ、今後の課題として、まちづくりは人づくりとの観点からの人材育成を意 識した推進体制の必要性や、住民の価値観の多様化への対応、また安全・安心や豊かさを感じることを 目指した協働の推進や、人々が生活にゆとりを持ってまちづくりに参加できるようにすることなどが挙 げられています。さらに、市民が主導し、協働するまちづくりを目指し、市民・企業・行政が一体とな るための自治基本条例の制定についても提案されています。

【基本構想】 第3章 市民の思い

(18)

第4章 北上市を取り巻く社会の動向

1.人口減少と少子高齢社会の進行

 わが国では、平成 16(2004)年をピークに人口減少社会に入り、平成 17(2005)年には合計特殊 出生率※ 10  が、1.26(厚生労働省「人口動態統計」)となるなど、少子化が進行しています。

 今後、団塊世代の高齢化が控え、平成 27(2015)年には 65 歳以上の割合が 26.O% と予測され、世 界でも前例のない少子高齢化による人口減少社会を迎えようとしています。

 岩手県の人口は、全国よりも早く平成 9(1997)年から減少傾向にあり、国立社会保障・人口問題 研究所の推計では、65 歳以上の割合は平成 27(2015)年には、30.3%、平成 47(2035)年には 37.5%と、いずれも全国を上回る速度で高齢化が進むと予測されています。

 このため、育児や子育てへの支援、医療・介護システムの見直し、高齢者の社会参加や生きがいづく りなど、地域ぐるみの取り組みや支えあいの仕組みづくりが必要となっています。

2.持続可能な都市への動き

 人口減少と少子高齢社会を踏まえ、平成 18(2006)年に国は、成長・拡大を前提とした従来の土地 利用政策の基本姿勢を転換しました。市街地の無秩序な拡大を抑制するとともに、公共交通網の充実を 図り、中心市街地に都市施設や居住機能を集約した「コンパクトシティ」の実現を目指し、都市計画法 をはじめとする、いわゆる「まちづくり三法※ 11  」を改正しました。

 県は平成 19(2007)年 11 月に「岩手におけるコンパクトな都市づくりの基本方針」を策定し、ま た、同年 12 月には「特定大規模集客施設の立地の誘導等に関する条例」が制定され、大規模集客施設 の立地を中心市街地に誘導するなど、既存の社会的生活基盤の有効活用や環境に対する負荷の低減を図 り、持続的に発展できる暮らしやすい地域社会の実現を目指しています。

 これからのまちづくりに当たっては、地域特性に応じた「持続可能な都市」の実現に向けて、生活環 境の向上や産業基盤の拡充整備のあり方を見定め、今後、必要となる土地需要に適切に対応する必要が あります。

3.環境問題の深刻化

 地球温暖化など地球規模での環境問題が深刻化する中、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄の 構造は見直しを迫られ、環境に配慮した資源循環型社会の形成に向けた取り組みが急務となっています。 また、限りある資源・エネルギーを有効活用し、生態系を維持しながら自然と共存していく、人と地球 にとって健康で持続可能なライフスタイルの提案が注目されており、個人レベルでの一層の意識改革や 取り組みが求められています。

 今後、環境負荷の少ない持続可能な地域社会を形成するためには、資源・エネルギーの節約・再利用 等はもとより、地域の産業経済においても、環境へ対応した技術の開発や普及、ごみ分別の徹底による 廃棄物の減量やリサイクル、新エネルギーの活用などの取り組みが必要とされています。

【基本構想】 第4章 北上市を取り巻く社会の動向

(19)

4.グローバル社会の進展

 グローバル社会の進展や中国をはじめとする東アジアの急速な経済成長は、わが国の経済に重要な影 響を及ぼしています。また、高度情報化の進展と輸送手段の進歩により「人」「もの」「情報」の交流は 急速に拡大し、地方自治や地域の産業、文化などの面においても、世界と直結した競争や共存の渦に巻 き込まれています。

 米国の経済問題に端を発した世界同時不況の到来は、輸出産業を中心に国内の産業に大きな影響を及 ぼし、その立ち直りに向けては国内外の先行きが見えにくいことから、これに伴う雇用不安の解消や景 気変動の波を受けにくい裾野の広い産業構造への転換が求められています。

 また、外国人労働者の増加、企業の国際的分業化の進展、国の国際的観光推進施策等によって、民間 レベルでも、これまでの友好交流を中心とした国際交流が変化をみせ、外国人観光客への対応や、外国 人が地域で生活するための環境の整備、生活支援などが必要になっています。

5.情報通信技術の発達

 情報通信分野においては技術革新が進み、インターネットや携帯電話に代表されるような情報ネット ワーク社会が急速に拡大しており、これを背景に産業、経済、行政、教育、医療福祉などあらゆる分野 で新たな可能性を生み出しています。

 身近な地域社会においても公共料金などのコンビニエンスストアなどでの支払いやオンラインショッ ピング※ 12  、ネットバンク※ 13  決済の浸透などにより、電子化や簡便化が進んでいます。

 こうした情報システムの急速な転換に対応できない情報弱者への支援をはじめ、地域による情報格差 の発生、個人情報の保護も課題となっています。

 情報システムの安全性確保や個人情報保護の徹底を図り、新しい情報技術を利用し、生活の豊かさや 便利さ、楽しさをみんなが実感できる地域社会を実現していく必要があります。

6.安全・安心への意識の高まり

 わが国は、地震や台風、大雨による自然災害に見舞われやすく、これらへの備えや被災時の応急対応、 復興支援などの対策の確立が求められ、東北地方においては、地震や洪水被害などの対策、特に、近い 将来の発生が予測されている宮城県沖地震への対応などが必要とされています。

 また、全国的に高齢者や児童・生徒が犯罪に巻き込まれるケースがみられることや、「食」に関する 安全性の問題、消費生活における危険性を懸念する声が強まっていることなど、安全・安心への意識は 高まっています。さらに、新型インフルエンザへの対応などから、危機管理体制の整備が求められてい ます。

 このため、地域の安全は地域全体で守るという視点に立ち、市民一人ひとりの安全意識の高揚はもち ろんのこと、それぞれが役割分担をしながら安全・安心が確保された地域社会を構築していく必要があ ります。

【基本構想】 第4章 北上市を取り巻く社会の動向

(20)

7.社会の成熟化

 自由時間の増大や情報環境の向上、生活圏の拡大などによる価値観・ライフスタイルの変化によって、 人々の暮らしは、物質的な豊かさから心の豊かさを求める方向に変化し、安らぎや癒し、個性や個人の 自由な選択が重視されるなど、成熟度の高い社会に変わりつつあります。

 そうした中、心の豊かさや美しい景観・文化に対する関心などが、これまで以上に高まっているとと もに、一人ひとりの個性や創造性を発揮できる環境づくりや仕事と生活の調和(ワークライフバランス) が求められています。

 良好な景観など新たな価値観に応えうる風土・風景等の維持・活用に向けた取り組みや、お互いの価 値観・ライフスタイルを理解し、尊重して共存するような共生社会を形成することが必要となっていま す。

8.地方分権社会の進展

 平成 12(2000)年の「地方分権の推進を図るための関連法律の整備等に関する法律」(地方分権一括法) 及び平成 19(2007)年 4 月 1 日施行の「地方分権改革推進法」により、地方自治体は地域の実情と 創意工夫に基づいて、個性と活力に富んだ地域づくりを進めることが重要となっています。

 このため地方自治体は、国からの権限や財源移譲・再配分を促すとともに、自らも行財政改革を推進 し、市民・企業・行政等の協働を推進していくことにより、真に自立した行政経営が求められています。  また、厳しい財政事情を背景に、各自治体に共通し重複するような経費については、効率化を図って いくことが求められており、相互に連携・調整して取り組む「広域行政」の必要性が高まっています。

9.多様な主体による協働の広がり

 少子高齢社会の到来をはじめとする社会情勢の変化により、公共交通、医療、福祉などの社会的サー ビスを取り巻く環境は厳しさを増しています。また、市民ニーズが複雑多様化する中で、行政サービス は一層の高度化や専門化が求められるなど地域づくりを進める上で、さまざまな課題が生じています。  こうした中、市民、NPO、企業等を主体とする活動領域や活動形態も多様化、高度化し、それ自体が 公共的価値を創出するという状況も生まれてきており、行政や事業者だけではない多様な主体が相互に 有機的に連携して、地域の課題に的確に対応していく地域づくりの担い手となってきています。  このため、市民のボランティアや NPO、コミュニティ団体、企業など、各々の力を発揮した市民参 画の促進や、地域の課題を住民自らが主体的に解決していくための仕組みづくり、地域性を重視した施 策の展開、活動への支援、専門的かつ高度な能力を有する職員の育成・確保などによる行政能力の向上 やネットワークづくりなどが求められています。

 今後、市民、企業等と行政による協働領域が一層拡大する中で、地域課題の解決に向けた総合力の向 上が求められ、地域コミュニティの確立や充実・強化、行政や NPO、企業などによる連携の取り組み が必要とされています。

【基本構想】 第4章 北上市を取り巻く社会の動向

(21)

第 1 章 計画の策定に当たって

1. 策定の趣旨 2. 策定の視点

(1)市民の主体的参画と多様な協働の促進

(2)地方分権への対応と魅力ある地域づくりの推進 (3)持続可能な行財政運営の確立

(4)行政評価と連動する計画の進行管理 (5)関連計画との整合と計画の実現性 3. 計画の構成と期間

(1)基本構想 (2)基本計画 (3)実施計画

第2章 北上市の概況

1. 北上市の歩み 2. 位置・地勢と気候 3. 地理的条件および交通 4. 人口・世帯

5. 産業 6. 土地利用

第3章 市民の思い

1. 地域計画について 2. 市民意識調査について

3. まちづくり市民アンケート調査について 4. グループインタビュー調査について 5. きたかみ未来創造会議について

第 4 章 北上市を取り巻く社会の動向

1. 人口減少と少子・高齢社会の進行 2. 持続可能な都市への動き

3. 環境問題の深刻化 4. グローバル社会の進展 5. 情報通信技術の発達

6. 安全・安心への意識の高まり

【基本構想】 第5章 北上市のまちづくりの課題

(22)

第 5 章 北上市のまちづくりの課題

 全国的な人口減少・少子高齢社会の到来を迎え、工業振興によるまちづくりを進めてきた北上市におい ても、将来の人口減少は避けられない状況にあります。このため、これまで人口増加を前提としてきたま ちづくりの方向を見直し、都市化と自然環境保全の調和を重視しながら、市街地の無秩序な拡大の抑制を 図るとともに、既存ストック※ 14  を活用し、各種都市機能の集積を図るなど、持続可能なまちづくりに向け た取り組みが必要となっています。こうした中、地域住民の安全・安心な生活の確保とともに、地域が主 体的に魅力の向上を図るなど、地域資源を活かした取り組みの重要性は増しており、市内 16 地域が有機 的に連携し、相互に発展できる取り組み(共生)を進めていくことも重要となります。

 未来を拓くまちづくりに向けては、地域に関わる一人ひとりが地域の抱える課題について深い認識を持 ちつつ、地域への誇りや愛着を持って様々な分野で積極的に活動することが重要です。そのための意識の 醸成や人材の育成が必要となっています。

 また、豊かさの実感できるまちづくりとして、悠久の歴史に支えられる伝統・文化や豊かな自然環境に 支えられた美しい景観などを保全・活用し、後世に継承することが必要であり、地域の特性を活かした協 働による取り組みが求められています。

 一方、行財政運営では、産業経済の見通しが不透明な中にあっても、地方分権の推進に取り組み、創意 や工夫を凝らしながら難しい局面を乗り切ること、すなわち「生き残る力」が求められています。

 市民一人ひとりがまちづくりの主役となり、真の豊かさを実感できる地域社会、理想とする地域社会を 築くためには、市民、企業及び行政がそれぞれの責任を果たし協力して取り組むことが求められており、 そのための仕組みづくりが必要とされています。

1.保健・医療・福祉

 北上市が、「住んでみたい」「住んでいてよかった」、「住み続けたい」と心から思えるような ふるさと を目指し、すべての市民がいきいきと安心して健やかに暮らせる環境づくりが必要です。

 少子化の傾向が進む中、「子育てにやさしい環境づくり」は、『北上市の施策に関する市民意識調査(平 成 20(2008)年 9 月)』における施策の優先度第 1 位の施策で、今後優先的に実施していくべき施策 として市民が考えているものです。このため、子育て中の家庭や親への支援に向け、保育施設の拡充や 地域の子育て機能の充実など、子育てに優しい環境づくりが必要とされています。また、高齢者人口が 増加する中、ひとり暮らしの高齢者の増加もみられ、見守りや生活を支える地域のふれあいや助け合い 機能の充実が求められているほか、高齢者や障がい者の自立支援に向け、積極的に社会参加できる環境、 安心して仕事ができる環境の整備が必要とされていす。

 介護環境については、介護サービスや福祉施設の充実について市民のニーズが高いことから、関係機 関の連携による地域福祉の充実が必要とされています。

 乳幼児から高齢者まで市民の健康を守る環境づくりに向けては、各種検診の充実や生活習慣病の予防 などの地域保健の取り組みが重要です。また、地域医療については、救急医療体制などに対する市民の 不安感を解消するため、的確な情報提供とともに、高度医療機能を核として医療機関が役割を分担する 地域医療体制の拡充が求められています。

 今後、これら健康や福祉に関わるあらゆる問題を総合的に解決するため、地域福祉活動を支えていく 人材育成や保健・医療・福祉などの関連分野、関係機関の連携による地域に密着した支援体制の充実が

【基本構想】 第5章 北上市のまちづくりの課題

(23)

2.教育・文化

 まちづくりの基礎は人づくりであり、厳しい経済情勢であればなおさらのこと、将来を見据えて教育 に力を入れる必要があります。

 学校教育においては、将来を担う子どもたちが、生涯学習の基礎・基本を確実に習得し、豊かな人間 性をもち、心身ともに健康な大人に成長するよう、教育環境の整備をはじめ、市の特性を生かした教育 の推進が求められています。

 また、多様化する市民の価値観やライフスタイルに対応するため、社会教育や芸術文化活動に対する 市民への意識啓発や情報提供、各種市民サークル活動の育成などが求められています。

 さらに、長い歴史の中で培われてきた文化財や生活に密着した文化などのさまざまな地域資源をより 一層活用することが求められています。民俗芸能等の PR や発表機会の充実、後継者の育成など、地域 への誇りと自信、愛着を醸成するための取り組みが必要とされています。

 スポーツ振興では、体力や健康づくりのため、市民の誰もが気軽にスポーツに親しむ機会の環境整備 を図るとともに、全国規模の大会誘致などの取り組みが求められています。

 教育・文化の分野に共通する課題として、市内にある教育・文化関連施設をより有効活用するための 取り組みや、世代間交流による知識・知恵の共有、次世代への文化の伝承、専門的な人材やリーダー間 の連携など人材活用が重要となっています。

3.産業・雇用

 持続的な地域社会の発展のためには、景気変動の波を受けにくい幅広い分野の産業集積や地域産業振 興の取り組みの強化と雇用の場の確保が必要です。このため、企業誘致の取り組みとともに、農業や商 工業、観光など地域の特色ある産業の連携、相乗効果の発揮と、バランス良い振興を図ることが課題と なっています。

 また、多様性ある工業を活かした他産業との連携とともに、大きく変化する社会経済状況に対応した 新たな発想や革新的な技術開発にもとづく産業おこしが求められているほか、高度技術者の育成など、 将来のものづくりに向け地元に根ざした人材育成が必要とされています。

 農林業は環境を守り多面的機能を発揮する生命産業であり、食料自給率向上や食の安全・安心に向け た重要性を踏まえ、担い手の育成や確保、地産地消の推進、遊休農地の有効活用などの取り組みが必要 です。また、山林が市域の半分を超える面積を有していることから、産業としての林業振興はもとより、 森林の持つ環境保全機能や防災機能が十分に発揮されるよう森林整備・保全を着実に推進するなど、農 林業者が意欲を持って働くことのできる魅力的な農林業の確立が課題となっています。

 日常生活を支える商業については、北上の特性に応じた振興を図り、消費者にとって、安全・安心を 提供できるように、また、市民との協働による賑わいの創出、地域経済や地域コミュニティの活性化、 高齢化社会への対応といった視点から中心市街地の形成を進めるため、既存商店街の活性化を図る必要 があります。

 観光面では、歴史的、文化的な観光資源の活用や連携による魅力の創出、情報発信、祭りや集客イベ ントの魅力向上、地域資源を活かした特産品の開発(地域ブランド化)等が課題です。

 地域雇用創出の観点からは、産業間のバランスの良い振興を図ることはもとより、非正規労働者の解

【基本構想】 第5章 北上市のまちづくりの課題

(24)

4.生活環境

 水と緑豊かな北上市の自然や地域環境を市民の大切な宝物として、素晴らしい環境がいつまでもその 輝きを保ち続け、持続可能な社会をつくるために、豊かな自然環境の維持・保全や地球環境に配慮した 循環型社会、低炭素社会※ 15  の形成に取り組み、安全で安心して暮らせる地域づくりが必要です。  循環型社会の形成に向けては、リサイクルをはじめとする 3R や 4R※ 16  の普及など、ごみの減量に対 する継続的な取り組みやごみ不法投棄の防止対策のため、監視体制の強化が求められています。加えて、 地球温暖化対策の観点から、太陽光・燃料電池など新エネルギーの導入や低公害車の普及、緑地の保全 など自然資本の活用による低炭素社会の形成が求められています。

 また、東北有数の工業都市として企業集積が進んでいることから、環境汚染事故の未然防止に向けた 監視体制の強化とともに、企業との連携が重要となっています。

 交通事故や犯罪のない明るいまちづくりに向けて、犯罪の防止については、地域の防犯パトロールや 市民・関係機関・行政が一体となった防犯活動の取り組み、子どもや高齢者の交通事故防止についても 関係機関の連携による取り組みが必要とされています。

 自然災害への不安が広がる中、「災害に強いまちづくり」は、『北上市の施策に関する市民意識調査(平 成 20(2008)年 9 月)』における施策の重要度が第 1 位の施策で、市民が最も重要視している施策です。 このため、市民に対する意識啓発とともに、消防・防災体制として、地域における消防団の充実強化や 自主防災組織の育成、災害に関しては、水害対策や土砂災害対策のほか、地域における災害時の情報連 絡体制づくり、学校の耐震化など災害に強いまちづくりの取り組みが求められています。

 一方、冬期間の降雪に対しては、きめ細かな除雪対策が必要とされています。

5.基盤整備

 市民一人ひとりが快適に暮らせるまちを築くためには、自然と都市のバランスがとれたまちを目指し、 市民の暮らしや生産活動に欠かすことができないまちの基盤づくりが必要です。

 景観形成に向けては、市民との協働による街路やまちなみ、自然環境を活かした北上らしい景観づく りなどの取り組みが重要となっています。

 地域内公共交通については、自家用車への依存が浸透している中、市民から不便さを指摘する声があ り、公共交通の空白地域や市内中心部と郊外を結ぶ交通、医療機関など公共施設の利用に際しての移動 手段の確保といった観点から、機能の整備を図っていく必要があります。

 公共施設等の整備に当たっては、どこでも、誰でも、自由に、使いやすくというユニバーサルデザイ ンの考え方を踏まえた整備が必要とされています。

 また、財政制約や施設の維持・更新コスト増大といった状況に対応することも重要であることから、 道路整備については、工法の検討や緊急、重要度による選択と集中により効率的な整備を進めるととも に、公共施設や道路橋梁などの社会的生活基盤については、改修整備によって長寿命化を図るなど、既 存ストックの有効活用のほか、市民の参画による維持管理も必要とされています。

 情報基盤の整備では、地域における情報の不均衡解消に向けた対策や情報通信システムを活用した行 政サービスの維持・向上を図ることが必要とされています。

【基本構想】 第5章 北上市のまちづくりの課題

参照

関連したドキュメント

北区都市計画マスタープラン 2020 北区住宅マスタープラン 2020

・本計画は都市計画に関する基本的な方 針を定めるもので、各事業の具体的な

「北区基本計画

2030年カーボンハーフを目指すこととしております。本年5月、当審議会に環境基本計画の

このような環境要素は一っの土地の構成要素になるが︑同時に他の上地をも流動し︑又は他の上地にあるそれらと

平成 26 年度 東田端地区 平成 26 年6月~令和元年6月 平成 26 年度 昭和町地区 平成 26 年6月~令和元年6月 平成 28 年度 東十条1丁目地区 平成 29 年3月~令和4年3月

都市 の 構築 多様性 の 保全︶ 一 層 の 改善 資源循環型 ︵緑施策 ・ 生物 区 市 町 村 ・ 都 民 ・ 大気環境 ・水環境 の 3 R に よ る 自然環境保全 国内外 の 都市 と の 交流︑. N P

本市は大阪市から約 15km の大阪府北河内地域に位置し、寝屋川市、交野市、大東市、奈良県生駒 市と隣接している。平成 25 年現在の人口は